上司である本部長の機嫌が悪い朝、ふと気づいたんです。
「あ、これはもう旅に出るしかないな」と。
そうして僕は、現実から全力で逃げるべく週末の予定を入れ、飛行機とホテルの予約をしました。
目的地は博多。
理由は単純明快、「本場の豚骨ラーメンを食べたかった」からです。
週末の夕刻、福岡空港に到着。
博多駅から人の波をかき分け、Googleマップ先生の導きのまま歩くこと10分。
見えてきたのは白い暖簾が揺れる「博多一双 博多駅東本店」。

その奥から、鼻孔を直撃するあの香り――とんこつ特有の、ちょっとワイルドで甘い匂い。
「この匂いだ。間違いない」
そう思って、僕は店のドアを押しました。
泡立つスープ、研ぎ澄まされた一杯
着席して注文したのはノーマルな「ラーメン」。
ほどなくして運ばれてきたどんぶりには、ふわふわとミルキーに泡立つスープが広がっていました。
これが噂の“泡系とんこつ”か、と感動します。

スープを一口。驚くほどクリーミーでありながら、しっかりと骨の旨味が主張してきます。
それでいて臭みはなく、口の中にふんわりと甘味が広がるような後味。
これは、丁寧に時間をかけて炊き上げた証拠でしょう。
麺はもちろん、博多ラーメンらしい極細ストレート。
低加水でパツンとした歯切れが心地よく、スープとの絡みも絶妙。
替え玉文化の発祥地らしく、「少し物足りない」くらいがちょうどいいのです。
博多ラーメンの魅力とは?
博多ラーメンといえば、白濁した豚骨スープに、極細ストレート麺が定番。
調理時間が短く、出てくるのも速い。そして替え玉(追加麺)で自分好みに調整できるのが最大の特徴。
卓上には紅ショウガ、高菜、ごま、にんにくといった定番アイテムが並び、味変も楽しい。
そして、最近の博多ラーメンは“泡系”という新潮流があるようです。
「博多一双」はその代表格で、従来のコッテリ感はそのままに、なめらかでまろやかな泡の質感がプラスされています。
その一杯は、荒んだ心をまるで包み込むような優しさを持っています。
一人旅の終わりにふさわしい一杯
ひとりで食べるラーメンは、誰かと食べるよりも深く沁みます。
とくに、それが旅先ならなおさらです。
「だいぶ気分が晴れたな〜」
そう思わせてくれる一杯に出会えるとき、旅は報われます。
そして今日、博多一双の泡立つスープが、その一杯でした。

店舗情報
店名:博多一双 博多駅東本店
住所:福岡県福岡市博多区博多駅東3-1-6
アクセス:博多駅筑紫口から徒歩約5分
営業時間:11:00~24:00(スープ切れ次第終了)
定休日:不定休
博多一双の後は、夜の屋台で〆の焼きラーメン

博多駅東で「博多一双」の泡系とんこつラーメンを堪能したあと、ふらりと中洲方面へ。
旅の夜はまだ終わらせたくなくて、屋台を目指して歩きます。
川沿いに並ぶ提灯の灯りと、屋台の湯気と、人々の笑い声。
そのどれもが心に染みます。

立ち寄ったのは、常連さんでにぎわう昔ながらの屋台。
注文したのは、博多名物「焼きラーメン」。
熱々の鉄板で炒められた中細麺に、ソースと豚骨の風味が絶妙に絡み合います。
シャキッとしたキャベツや紅しょうががアクセントになって、酒の肴にも最高。

「昼はスープ、夜は鉄板」
同じ“ラーメン”でも、こんなにも違う表情を見せるのが博多の面白さです。

ふと顔を上げると、隣の知らない人と目が合って、軽く笑いました。
日常の悩みも、この街の温もりで少しやわらぎます。


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